俺・君塚君彦が地上一万メートルの上空でシエスタと出会い、流浪の旅に出てから二年あまり。
シエスタの提案で俺たちは赤道直下の島国・シンガポールを訪れていた。
そこで出くわしたのは名探偵にさえ勝るとも劣らぬ美しい依頼人、大人の魅力を有したシンガポール国家元首の孫娘――リン・メイファン。
彼女は俺たちにギャングに盗まれた国宝の首飾りを取り返してほしいという依頼を告げる。
「ご依頼ありがとうございます。どんな事件でも俺たちにお任せを」
「助手? さっきまでとやる気が違わない?」
俺のやる気はさておき、この程度の依頼はシエスタの手に掛かれば難しくはないはずだったが……。
「私たちはなにか大きな勘違いをしてたのかも」
やがて俺たちはこの国を根底からを揺るがす巨大な騒動に巻き込まれていき……?
これは名探偵が生きていた頃の物語――二人が紡いだ目も眩むような三年間の、非日常の一幕。